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ある日ある時、思い詰めたでも思い付いたでもない声で、リシドに問われた。
彼の云う『あの人』は、あの日あの時、皆の前で消えた存在。
別段批難するでもない問い掛けを、リシドは否定しなかった。
「ボクは…思い出さないよ」静かな答えに、リシドは複雑な表情をしていた。
思い出す事なんか、ない。
ひとりの空間に戻り、改めて思う。
だって、ほら…。
あの日あの時と、同じ声同じ姿で、消えた筈の存在は、此処に居る。
「なぁ主人格サマ、オレの事思い出さねぇの?」
違う。
ボクが縛り付けているのだ。
彼と自分を同一視する事が出来ず、
まだ自分達の犯した全てを背負いきれない。
だからそれを彼に押し付けようと、
そんなボクのエゴで繋ぎ留めているだけなのに。
なんで、そんな風に笑えるんだよ。
「嫌なら追い出してくれていいんだぜ?…あの時みたいに」からかう様な声と、真摯な瞳。
彼に全てを押し付けて追い出すのが楽、なのは知っている。
そして、それではいけない事も。
時間は掛かるだろうけど、と付け足せば、彼はまた笑った。
「楽しみにしてるぜ」
あの日あの時、枝分かれたボク達は、
いつかまたひとつになる。
けれどその日その時が来るまでは、
どうか、お前は『お前』のままで居て。
エゴイスティックに、そう願う。
終