買い物に出た先々で見掛ける“七夕”の振り仮名を見事に読み違えた闇マリクに、
マリクは素早く訂正を入れた。
蒸し暑い街を彩る涼しげな飾りの数々を眺めながら説明を加えると、
さして関心もなさそうにしていた彼が不意に振り向いた。
意外に興味を示した闇マリクに、マリクは誰かから聞いた“伝説”を話した。
愛し合う余り本来の勤めを忘れて神の怒りを買い、
天の川の両岸に隔てられた織り姫と彦星が、一年に一度だけ逢える日…
それが七夕である、と。
話を聞いた彼は、不可解そうな顔をして呟いた。
「そんなに愛し合ってるなら、川ぐらい渡ってきゃいいじゃねぇか」
全く彼らしい発言に思わず吹き出すと、彼はますます不可解な顔をする。
が、急に真剣な顔をしてマリクに尋ねた。
突然の質問に、返答に窮した。
織り姫と彦星の様に、もし自分達も離れ離れにされたら、という意味の問いだろう。
彼の回答は先刻の発言からして判る。
なら自分は…?
暫し考え込んだ後、マリクは口を開いた。
「ボクだったら神にこう言うよ、
その答を聞いた闇マリクは、ひどく複雑な顔をする。
素直に喜べない、とありありと分かるその表情にまた吹き出しそうになりながら、仕方ないなと言葉を続けた。
瞬間、闇マリクの表情がぱっと晴れる。
その様子に、単純だなぁと思いつつ、
そんな彼を見て嬉しくなってしまう自分もまた単純だな、と、マリクは笑った。
嗚々神よ、
願わくは、
もとはひとつの我らを
隔てること勿れ…