時の頃はまだ昼を過ぎた辺りというのに、周囲は薄暗い。
外では随分前から、雨が音もなく降り続いている。
秋の長雨、というものらしい。
数ヵ月前にも、梅雨だといって雨の降る日が続いた事があった。
その時はひどい蒸し暑さに辟易したものだが、今は同じ雨続きでも過ごし易い。
しかしそれはマリクにとっての話であって、闇マリクにも当て嵌まる事ではないらしい。
『暗く曇って音もなく雨の降る日』が嫌いだと言った彼は、極端に口数を減らし、行動力を落とした。
現に、今もマリクの傍らで身体を丸める様に臥している。
おかしな話、だと思う。
彼は夜の闇を畏れはしないし、荒れ狂う嵐にも怯みはしない。
それなのに…。
小さな呼び掛けに続き、絡めた指先にも僅かに力が入る。
見上げてくる眼差しは、まるで幼い子供の様だ。
指先をそっと握り返し、静かにだが力強く応える。
それだけで充分に安心したのか、彼はゆるゆると目を閉じた。
自分より強く在ろうとする闇マリクの弱さを、マリクは否定的に捉えない。
寧ろ、自分にない強さがあるなら、自分にない弱さがあってもいいと思う。
自分達は、ふたりでひとつなのだから。
だから今は、ボクがお前を支えてあげる。
悪い夢に堕ちない様に、傍で放さないでいてあげる。
だから今は、ゆっくりおやすみ。