夏の暑さも本番を迎えたある日の昼下がり、除湿を効かせた部屋でマリクが呟いた。
ソファに寝転がって脚をぱたぱたさせる彼の視線は、少し離れたテレビに注がれている。
誘われる様にテレビに目を遣った闇マリクの言葉通り、
そこには巨大プールをメインにしたアミューズメントパークが映っていた。
色とりどりの水着を着た人々が、さも楽しそうに水と戯れている。
それを見ながら、彼らも好き勝手に喋り始めた。
曰く、あれは面白そうだ、とか
あれは痛いんじゃないか、とか
あれは気持ち良いだろうな、とか
あれこれと喋りながらも、お互い「行きたい」「行ってみたい」とは言わなかった。
プールなどという所へ行けば必然的に肌が、背が、人目に触れる事になる。
役目を終えたからとて消える事なく背に残された刻印。
それを他人に見られる事を、マリクが今なお極端に嫌うと、闇マリクはよく知っていた。
闇マリクの突然の提案に、マリクは一瞬ぽかんとした。
が、すぐにその意を得たりという表情に変わる。
些か噛み合っていない問答ではある。
が、プールに行けぬならせめてここで楽しもうという、
そんな闇マリクなりの優しさからだと、マリクは解っていた。
宣言するかの様に声を上げ、マリクはソファからくるりと立ち上がる。
先程までよりどこか晴れやかになったその笑顔に、闇マリクの柔らかな笑顔が重なった。