「金糸」
『金糸(キンシ)』

暗闇の中でも きらきらと輝く その金色が 好きだった。


ある日の午後、姉の不在を見計らって、マリクはリビングでTVゲームを始めた。
曰く、大画面の方が迫力があっていい、らしい。
ゲームに対する関心を失している闇マリクは、静観を決め込んだ。

マリクの座るソファの背に後ろから寄り掛かる。
何かしら口にしながらマリクが一喜一憂する度に、その髪が視界にちらつく。
誘われる様に、闇マリクはそれに手を伸ばした。

自分の様な落ち着きのない髪とは違う。
指の間をさらさらと流れる、清らかなプリズムブロンド。
どれ程想い焦がれても手の届かなかったあの頃から、ずっと好きだった。
その想いは、今も変わらない。


「…何してるんだよ?」

ゲームを中断させたマリクが、訝しむ表情で振り向いた。

「んー…別に何も?」

少しだけ手を引いて答える。

「…何、もしかして拗ねてるの?」

「いいや、オレは上機嫌だぜぇ?」

嘘はついていない。
現に今も笑みが零れてくるのだから。

「…ヘンな奴」

くすりと笑ったマリクはそれ以上何も言わず、ゲームを再開した。
それを邪魔しない様細心の注意を払いながら、闇マリクはマリクの髪をすく。


あの頃からずっと、
今でもずっと、
これからもずっと、
この想いは変わらないのだろう。
美しい金色とその持ち主への愛しさを込めて、闇マリクは手中の金糸に口付けた。



髪フェチ葉月の書く、髪がテーマのSS第一弾(笑)。
視点は闇マリク。
「プリズムブロンド」は造語且つ自分設定(殴)で、
「偏光性のある金髪」という意。
彼が好きなのは彼の全て。
髪はその象徴とでも。